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2022年度 例会及び講演会発表要旨
●2023.1.30|転移因子が駆動する哺乳動物の個体発生
坂下 陽彦
慶應義塾大学医学部 分子生物学教室・助教
松前 ひろみ(分子生命科学)

全能性とは、あるひとつの細胞がいかなる細胞種にも分化・個体形成できる能力を指し、我々ヒトを含む哺乳動物においては、終末分化した卵子と精子の受精によって誕生する「受精卵」のみが唯一全能性を発揮できる。興味深いことに、全能性期にある受精卵では、生物進化の過程で宿主ゲノムに感染し組み込まれた内在性レトロウイルス (Endogenous Retovirus: ERV) の発現がゲノム広範囲に一過的に惹起される。近年、講演者らはこの全能性期特異的なERVの発現が、宿主の細胞分化ならびに遺伝子発現制御に必須であることを見出した。本講演では、これら最新の研究結果を共有し、発展研究への議論を深めたい。
●2023.1.30|マウスモデルを用いた胚着床機構の解析
藍川 志津
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 特任研究員
松前 ひろみ(分子生命科学)

近年、高度生殖医療の需要はますます高まり、現在では全出生児の14人に1人が体外受精児である。良好な胚(受精卵)の選別法が発展を見せる一方、どんなに胚移植を行っても妊娠が成立しない着床障害が問題となっている。倫理的観点から、着床を含めた妊娠過程の解析をヒトで行うことは困難であり、着床の制御機構については未だブラックボックスのままである。 本発表者はこうした背景に強い関心を持ち、ヒトと子宮内膜組織構造や着床のステップが類似したマウスを用いて解析を行ってきた。本発表では、進化的な観点も取り入れながら、着床研究に関する最新の知見を報告する。