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2021年度 例会及び講演会発表要旨
●2021.9.10|難治性白血病における薬剤耐性機序
犬飼 岳史
山梨大学医学部 小児科学講座 教授
安藤 潔(内科学系血液腫瘍内科学)

白血病細胞の感受性には、患者本来の遺伝的な素因に加えて、白血病細胞が獲得した遺伝子の変異やエピジェネティック修飾が関与していることが明らかになっている。私たちは、難治性ALLから樹立された多数の細胞株を活用して、これらの要因の影響について検証を進めてきている。また、遺伝子および変異の薬剤感受性への影響を、ゲノム編集技術を応用して検証する実験系の確立にも取り組んできており、その成果も紹介したい。
●2021.12.7|希少疾患とこれからのゲノム医療 ―網羅的遺伝子解析とAI―
要 匡
国立成育医療研究センター ゲノム医療研究部 部長
木村 穣(総合医学研究所)

ゲノム医療・研究は、米国Precision Medicine Initiative(現在100万人ゲノム計画), 英国10万人全ゲノム計画(現在100万人―500万人計画)など世界的潮流となっており、主な対象は、がんと希少疾患である。この希少疾患は、約8割が遺伝性疾患(遺伝子関連疾患)とされ、その種類は現在9,000(OMIM登録数)を超えており、診断が困難、病態が不明といった疾患も多く、また個々に超希少な疾患などは治療薬開発も進まない、といった問題があった。しかしながら、ゲノム解析機器の革新と進歩、人工知能の活用、それらを取り入れた大型研究は、その原因解明や診断に大きな進展をもたらした。また、遺伝子関連疾患の原因解明は、当該疾患ばかりでなく、時にはありふれた疾患(common disease)への治療へも繋がり、ブロックバスターの登場といった事例なども示されつつある。そこで、本講演では、上記、希少疾患(遺伝子関連疾患)解析の重要性を呈示するとともに、開始当初より参画している、わが国の大型研究の一つ、網羅的遺伝子解析を中心とした希少・未診断疾患イニシアチブ(IRUD)について、研究部での実績を中心に紹介し、今後の展望について述べる。加えて、開発中の希少疾患AI診断支援システムなど、近年、ゲノム医療分野においても広がりつつあるAI(人工知能)の活用についても紹介し、これからのゲノム医療について述べてみたい。(記:要先生)要先生は2015年度からの新設部を率いて来られました。「疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト」の中核としての研究の進展を伺える機会になるかと思います。多数ご来聴ください(記:木村)
●2021.12.8|大学病院・医学部における臨床検査専門医の役割(自然免疫・血球分化におけるミトコンドリアの機能解析)
後藤 和人
九州大学医学部 講師
中村 直哉(基盤診療学系 病理診断学)

臨床検査医学は基礎医学と臨床医学を結ぶ総合的・横断的な学問であり,様々な疾患の病態解析や新たな臨床検査法の開発を含め,基礎研究から臨床応用に至るあらゆるステップに関わりを有します。近年、自然免疫細胞(マクロファージ・樹状細胞・リンパ球)において、ミトコンドリアの機能と活性化・分化の関係の解析が進んできました。私たちのグループは、基礎医学においては樹状細胞を主とし免疫細胞・血球細胞のミトコンドリアを中心とした検査法ならびにアレルギー・乾癬などの新たな分子メカニズムの解明と治療法の開発を行いました。また、病院の実臨床においては、B型肝炎再活性化の予防対策のためのシステムの改修・医療安全の推進・医師への教育を行ってきました。これらの成果の一端を発表させていただきたいと思います。
●2021.12.17|骨髄の免疫染色
伊藤 雅文
ITO・MD 病理研究所 所長
中村 直哉(基盤診療学系 病理診断学)

免疫染色はタンパクの局在を明らかにすることで診断の特異的マーカーとなる。骨髄においては、正常造血細胞だけでなく白血病細胞の分化段階を特定可能である。また遺伝子異常をコードするタンパクの免疫染色で特異的遺伝子異常の証明が可能である。骨髄の免疫染色を様々な観点から解説する。