2019年度 例会及び講演会発表要旨
●2019.4.15|CRISPRing genomes made easy
Dr. C.B.Gurumurthy
University of Nebraska Medical Center, Developmental Neuroscience, Munroe Meyer Institute for Genetics and Rehabilitation. Director of the UNMC ’s Mouse Genome Engineering Core Facility. Associate Professor
司会:大塚正人(基礎医学系分子生命科学)
The CRISPR-Cas9 tool has radically changed the way how the decades-old traditional transgenic technologies are practiced lately. Our lab has pioneered some breakthrough CRISPR based technologies to create complex animal models including long cassette knock-ins and conditional knockout mouse models. Our technological contributions, particularly Easi (Efficient additions with ssDNA inserts)-CRISPR have been widely adapted in the animal transgenesis field. In my presentation, I will discuss how the latest technological advances have redefined the traditional transgenic methods and discuss the potential applications of Easi-CRISPR for cell genome engineering.
●2019.4.17|Chromatin landscape modifications in human cancers
Lyuba Varticovski 先生, MD
Associate Staff, LRBGE
Center for Cancer Research, NCI, NIH
Center for Cancer Research, NCI, NIH
司会:後藤信哉(内科学系循環器内科学)
演者が所属するLaboratory of Receptor Biology and Gene Expression(LRBGE), NCI , NIHでは様々な癌の遺伝子解析をしていますが、今回のセミナーでは膀胱癌におけるクロマチンランドスケープの解析例を紹介していただきます。膀胱癌の原発巣と転移巣において、クロマチンランドスケープをDNase I hypersensitivity with deep sequencing (DHS-seq) , RNA-seq, genome sequencingの手法を組み合わせて解析した結果、転移に伴ってオープンクロマチン領域の著明な変化が認められました。このような変化は膀胱癌進展機序の解明、及び、新規バイオマーカーにつながるのではないかと研究を進められています。興味のある先生方のご来聴を期待しております。
●2019.4.22|疾患特異的マクロファージの機能的多様性
佐藤荘 先生
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学准教授
司会:稲垣豊(基盤診療学系先端医療科学)
最近の免疫学のトピックの1つとして、M1・M2マクロファ-ジが挙げられる。しかし、私たちはマクロファ-ジはM1・M2ではなく、更に詳細なサブタイプに分かれると仮定して研究を行った。その結果、アレルギ-に関わるサブタイプはJmjd3により分化すること(Satoh T. et al, Nature Immunology 2010)、またメタボリックシンドロ-ムに関与するサブタイプはTrib1より分化することを突き止めた(Satoh T. et al, Nature 2013)。これらの研究から、現在私たちは、病気ごとの“疾患特異的マクロファ-ジ”が存在している可能性を考えている。新たな疾患特異的マクロファ-ジを探索するために、線維症に着目して、Ly6C-Mac1+分画の一部の細胞が、線維症の発症に必須であることを突き止めた (Satoh T. et al, Nature 2017)。 これら疾患特異的な細胞を標的とした創薬は、その疾患特異性の高さから、副作用の少ない創薬応用につながることが期待される。
●2019.6.27|なぜクスリは高くなるのか?
高橋栄一 先生
元 アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社 代表取締役社長
司会:後藤信哉(内科学系循環器内科学)
昨今、悪性腫瘍、希少疾患などに関する治療薬が開発され、著しい高価が話題となっています。疾病を治療する選択肢が増えたことは良いことなのですが、一回数千万円の治療となると費用負担に関する議論が避けられません。今回は循環器内科の臨床医でありながら、キャリアの途中から製薬企業に勤務され、最後には社長まで勤めた高橋栄一先生をお呼びして、製薬企業のサイドから開発した薬剤が高価にならざるを得ない理由などをお聞きしたいと存じます。多数の職種の参加を期待しています。
●2019.7.5|How to protect brain from cerebral ischemia:Mechanism and neuroprotection
Dr. Ludmila Belayev
Professor of neurosurgery, Neurology and Neuroscience Neuroscience Center of Excellence Louisiana State University Health Sciences Cente
司会:永田栄一郎(内科学系神経内科学)
急性脳梗塞では世界的に血栓溶解療法や機械的血栓除去療法が標準治療になっているが、未だに麻痺後遺症や死亡の第一の原因である。脳虚血は脳代謝の要求を満たすに充分な脳灌流が得られない病態であり、局所脳虚血(臨床では脳梗塞)と全脳虚血(臨床では蘇生後脳症)に大別される。脳虚血は興奮性アミノ酸の過剰遊離、カルシウム流入による活性酸素種・フリーラジカル産生など連鎖的なカスケードで細胞死をもたらす。このカスケードを視野に入れ、脳保護治療は可逆・不可逆的組織障害の境界に位置する “ペナンブラ”を救うことに向けられている。
現在omega-3 polyunsaturated fatty acidsが脳保護薬として脚光を浴びている。現在様々なdocosahexaenoic acid 由来の新規化合物が合成されている。特にneuroprotectin D1は多核白血球の浸潤を軽減し、アポトーシスの抑制、梗塞巣の縮小効果をもたらす。本講演では、これら新規脳保護薬研究の最先端の開発現状を概説する。
●2019.7.5|Calcium-release activated calcium (CRAC) channels in stroke and brain injury
Dr. Yenari A. Midori
Professor, Department of Neurology, University of California, San Francisco & the San Francisco VA medical center
司会:瀧澤俊也(内科学系神経内科学)
Calcium release-activated calcium channels(CRACチャネル)は細胞内におけるカルシウム流入に関与する。CRACチャネルは小胞体内のカルシウムの枯渇を感知して活性化されるが、このチャネルはミクログリアを含む様々な免疫細胞上に存在しており、チャネルを介したカルシウムの細胞内への流入によりカルシニューリンの活性化が引き起こされ、炎症応答性分子がup-regulationされる。脳卒中領域における過去の研究では脳虚血に伴ったこの免疫応答が神経機能予後に悪影響を及ぼしうること、カルシニューリン阻害による良好な転機に影響しうる点について報告されてきた。これまでに脳梗塞・頭部外傷モデル動物を用いた検討でFK506(タクロリムス)やシクロスポリンAといったカルシニューリン阻害薬(CNIs)の投与による転機改善の報告が複数の研究グループよりされてきた。しかしながら、これらの薬剤はCRACチャネルに対する特異的な阻害作用を示しておらず、種々の副作用があることから臨床応用には至っていない。今回我々はCRACチャネルに特異的に作用し、CNIsで見られる副作用のないCRACチャネル阻害薬を用いた検討をCalciMedica(San Diego, CA)からの提供を受けて行った。我々の検討の結果、脳梗塞モデルおよび頭部外傷モデル動物にてCRACチャネル阻害薬による転機改善の結果が得られた。このCRACチャネル阻害薬は他疾患にてすでに臨床試験が進められており、急性期脳梗塞や頭部外傷などにおける臨床試験への応用を含めて概説する。
●2019.9.14|Patient safety and quality improvement
Melvin S. Blanchard, M.D. F.A.C.P.
Professor of Medicine, Department of Internal Medicine, Washington University School of Medicine
司会:柳秀高(内科学系総合内科学)
Dr. MELVIN BLANCHARD, MD,FACPはセントルイスにあるワシントン大学医学部付属病院内科プログラムディレクターであり、Alliance for Academic Internal Medicineという全米の内科プログラム全体を統括する団体の理事も兼任されている医学教育の専門家である。さらに、ワシントン大学医学部の教員であるとともに、Barnes-Jewish Hospitalという名門病院の内科プログラムディレクターを努めている。一昨年にはAccreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)からParker J Palmer Courage to Teach Awardという、innovativeな教育を行ったプログラムディレクターに送られる伝統ある賞を受賞するなど、医学教育界の第一人者である。医療の質を上げ、患者安全を向上させることは日本の病院でも喫緊の課題である。そのためには良質な医学教育と医療の質、医療安全に対する病院全体での取り組みが重要である。東海大学医学部付属病院でも医療監査部を中心に院内急変対策や感染症診療の標準化などの活動を行っているところであり、米国の名門医学部・病院での活動を学び日常診療に活かすまたとない機会としたい。
●2019.9.27|GTP代謝からみる細胞機能と疾患
佐々木敦朗 先生
シンシナティ大学 医学部准教授 |University of Cincinnati College of Medicine
司会:中川草(基礎医学系分子生命科学)
GTPとATPは、DNAやRNAの構成ブロックとしてのみならず、エネルギー分子として様々な細胞機能を駆動する力としても使われています。ピリミジン骨格をもつUTP/TTP, CTPも同様の働きを持っています。これら4種の核酸は、それぞれ異なるカテゴリーの細胞同化反応に使われています。我々が取り組んでいるGTPは、細胞の主要成分であるタンパク質合成を駆動するエネルギーです。タンパク合成では、一つのアミノ酸伸長において2分子のGTPが消費されます。タンパク合成が盛んな免疫細胞や膵臓細胞、そしてすごいスピードで分裂する細胞では、大量のGTP消費が起きています。ところが、ATPについて膨大な研究が行われATPエネルギー感知機構や制御への知が構築されてきた一方で、GTPについては大きく看過されてきました。
私達はGTPエネルギーを感知する“GTPセンサー”が哺乳細胞類細胞に備わっていることを、2016年に発見しました(Sumita et al., Molecular Cell, 2016)。このGTPセンサーの正体は脂質キナーゼで、なんとGTPを基質として使っていました。さらに爆発的に増殖するがん細胞においてGTP代謝がドラマティックに変化して、その同化作用の基盤となっていることを発見しました(Kofuji et al., Nature Cell Biology, in press)。私達はGTPエネルギー代謝には、まだまだ多くの秘めたる驚くべき働きがあると考えています。本セミナーではGTPの視点からみえてくる新たな細胞機能制御そして疾患、そしてGTP代謝を標的とした新たな治療戦略について我々の最新のデータとともに紹介致します。
●2019.10.3|Human Liver and Intestine-derived 3D ECM Scaffolds and Hydrogels for Fibrogenic Disease Modelling
Massimo Pinzani, MD, PhD, FRCP
Professor of Medicine, Sheila Sherlock Chair of Hepatolog
Director, the Institute for Liver and Digestive Health Royal Free Hospital, University College London
Director, the Institute for Liver and Digestive Health Royal Free Hospital, University College London
司会:稲垣豊(基盤診療学系先端医療科学)
Biological scaffolds composed of extracellular matrix (ECM) could be derived by decellularisation of a tissue wedge section up to the whole organ with preservation of ECM integrity, bioactivity and three-dimensional (3D) organisation. The development of well- defined 3D in vitro models, which mimic native tissue ECM structures, has demonstrated the importance of cell-matrix bio-mechanics occurring within a 3D microenvironment in the recapitulation of the complex interactions between parenchymal and stromal cells, in the process of hepatic or intestinal fibrogenesis. Along these lines, the laboratory of Regenerative Medicine and Fibrosis at the Institute for Liver and Digestive Health, at the Royal Free, University College London (UCL-ILDH) has developed a novel, proprietary, technique to rapidly decellularize healthy and diseased human liver tissue (Mazza G et al. Scientific Reports 2015; Mazza G et al Scientific Reports 2017) or intestine (Giuffrida P et al., Inflamm Bowel Dis 2019). This novel technique allows isolating the ECM from human healthy and diseased organ tissues by removing the cells but maintaining its ECM properties and structure. The resulting organ-derived bio scaffold has thoroughly been characterized with respect of the preservation of its native ECM, protein composition, 3D microarchitecture, bioactivity, angiogenic potential, topography and biochemical/ bio-mechanical properties compared with the native tissue.
●2019.10.4|肝内リンパ管新生の機序と役割
岩切泰子 先生
Associate Professor of Medicine, Section of Digestive Diseases, Yale University School of Medicine
司会:加川建弘(内科学系消化器内科学)
組織においてリンパ管は、組織液の恒常性維持に重要な働きを持つ。肝臓では大部分のリンパ管と神経は門脈域にみられ、肝硬変では肝臓でのリンパ液産生の増加に伴い肝内リンパ管も増加する。肝内リンパ管新生は、他の肝疾患でも増えていることは報告されているが、その機序と役割についてはよくわかっていない。最近の研究で我々は、非硬変性特発性門脈圧亢進症の患者、あるいは非硬変性門脈圧亢進症のモデルである門脈部分結紮術 (partial portal vein ligation; PPVL) ラットにおいて、門脈域に顕著なリンパ管新生がみられる事を見出した。大変興味深いことに、このモデルでVEGF-C分泌の主体は交感神経のシュワン細胞であることが分かった。現在まで神経系におけるVEGF-C発現の報告は、発生期の中枢神経で唯一の報告があるのみで、成人期の末梢神経におけるVEGF-C発現の報告は今回が初めてである。本講演では、最近の我々の研究に加え、肝内リンパ管の基礎的知見、役割、治療への応用などについて議論したい。
●2019.10.8|「自己基盤が脆い」患者へのアプローチ
大塚類 先生
東京大学大学院 教育学研究科 講師
司会:竹下啓(基盤診療学系医療倫理学)
治療拒否をする患者理解に向けて――自己基盤の脆さという観点から治療を拒否したり、治療に前向きでなかったりする患者は、自分を大事にしたり、他者とうまくコミュニケーションをとったりするために必要な自己基盤が脆い。これが、医療現場(透析・訪問医療)で診察に立ちあったり、複数の患者にインタビューしたりした結果、導き出された観点である。本講演では、哲学の知見を手がかりとしながら、「自己基盤」が「脆い」とはどういうことで、自己基盤が脆い人たちをどのように理解しアプローチできるのかについて、具体的な事例を挙げながら考えていきたい。
●2019.10.11|DNA鑑定の最前線
玉木敬二 先生
京都大学大学院医学研究科 法医学講座 教授
司会:大澤資樹(基盤診療学系法医学)
「DNA鑑定」という語が一般に通用する用語となり、事件や身元確認などでメディアにも頻繁に登場するようになった。わが国の刑事鑑識分野でのDNA鑑定は1989年に始まったが、2000年代になってキャピラリー電気泳動法によるマイクロサテライト(STR)の自動分析法が普及し鑑定数が飛躍的に増大した。現在は同分野が行う鑑定数は年間約30万件を推移している。また、技術の進歩と犯罪の巧妙化のため、微量な資料や複数人の混合資料の分析依頼が急増している。このため、新しいSTR検査が本年4月より導入され、捜査などにおけるDNA鑑定の比重はますます大きくなってきている。
しかし、検察官や法廷等でDNA鑑定結果に対して大きな期待を寄せられていると思う一方で、殆どの医学生がDNA鑑定で行う検査の内容や結果の解釈について知識がなく、DNA鑑定の実態が知られていないことに驚いている。そこで、本講演では現在のわが国のDNA鑑定における検査方法や、検査結果の解釈について紹介し、合わせてDNA鑑定の今後について考えてみたい。
●2019.10.5|Parasitic keratitis during the past decade at King Chulalongkorn Memorial Hospital in Thailand
Dr. Chaturong Putaporntip
チュラロンコン大学 医学部 准教授
司会: 橘裕司(基礎医学系生体防御学)
During the past decade, patients presenting with keratitis caused by either Acanthamoeba or microsporidium were diagnosed with an increased prevalence at King Chulalongkorn Memorial Hospital in Bangkok, the second largest hospital in Thailand. The majority of patients with Acanthamoeba keratitis and those with microsporidial stromal keratitis developed severe clinical course and usually required keratoplasty. Most of the acanthamoebae isolated from these patients belong to T4 genotype whereas other genotypes could be sporadically encountered. Meanwhile, almost all microsporidial superficial punctate keratitis cases were caused by Vittaforma corneae whereas various species of microsporidia have been incriminated in stromal keratitis. Environmental contamination could be the primary sources of these infections. Some investigations on these issues will be discussed.
●2019.10.15|Aptamer-based assay for the detection of Trichomonas vaginalis
Dr. Windell L. Rivera
フィリピン大学ディリマン校 理学部 教授
司会:橘裕司(基礎医学系生体防御学)
Trichomoniasis, the disease caused by the protozoon Trichomonas vaginalis, is currently classified as non-reportable disease despite being the world’s most prevalent non-viral sexually transmitted infection (STI) according to the 2008 global STI estimates by the World Health Organization. The global estimates on trichomoniasis is yet to be updated and an efficient surveillance system is needed. Currently, the immunochromatographic dipstick assay OSOM trichomonas test is the only point-of-care assay for T. vaginalis. The use of this antibody-based assay is still limited. However, synthetic antibodies or aptamers present as an alternative and possibly more efficient biorecognition molecule than the antibodies. Aptamers for T. vaginalis adhesin protein 65 (AP65) have been selected through a plate-based systemic evolution of ligands by exponential enrichment (SELEX) and evaluated for use in the detection of the parasite using an enzyme-linked aptamer assay (ELAA).
●2019.10.23|新規抗体薬物複合体(ADC)薬への挑戦 ―[fam-] trastuzumab deruxtecan (DS-8201a)の創製―
我妻利紀 先生
第一三共株式会社 研究開発本部・オンコロジー第一研究所 所長
司会:穂積勝人(基礎医学系生体防御学)
癌細胞に結合する抗体に、細胞毒性を有する薬物を結合させた抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、選択的かつ効果的に癌細胞を死滅させるとともに、全身毒性軽減が期待される次世代抗体医薬品である。我々は、DNAトポイソメラーゼI阻害剤エキサテカンの新規誘導体を薬物本体とするユニークなADC薬物リンカー技術を確立した。本技術は先行技術に比べ高比率かつ均一に薬物を抗体に結合させることが可能であり、バイスタンダー効果に基づく強力な抗腫瘍活性を発揮するともに、リンカーの高い安定性と遊離薬物の血中半減期が短いという安全性にも配慮した特長を有する。抗HER2抗体に本技術を適用した抗HER2 ADC(DS-8201a)は、第I相臨床試験においてがん患者における安全性と忍容性、及び、HER2発現又はHER2変異を有する乳がん、胃がん、肺がん、大腸がんなど複数の患者で有効性が確認され、HER2陽性乳がんに関しては本年9月に国内製造販売承認を申請した。更に、同技術を適用した抗HER3 ADC (U3-1402)、及び抗TROP2 ADC (DS-1062a) の第I相臨床試験が進行中である。
●2019.11.19|Redefining therapy response in BRCA cancer
Dr. Sharon B. Cantor
Associate Professor, Department of Cancer Biology, University of Massachusetts Medical School
司会:谷口俊恭(基礎医学系分子生命科学)
BRCA1 or BRCA2 (BRCA)-deficient tumor cells have defects in DNA repair by homologous recombination and DNA replication fork stability that is thought to underlie poly(ADP) ribose polymerase (PARP) inhibitor (PARPi) sensitivity. However, new findings indicate that PARPi do not initially generate DNA breaks or pause replication forks, but rather accelerate DNA replication forks (Maya-Mendoza, A. et al Nature 2018). Thus, we tested the hypothesis that sensitivity results from combined replication dysfunction. Consistent with this interpretation, here we demonstrate that PARPi-induced replication acceleration is exacerbated in BRCA deficient cells, but avoided in cells that are not sensitive to PARPi. Furthermore, in BRCA deficient -tissue culture and -patient tumors and in known and de novo models of PARPi resistance, we find that this replication dysfunction is suppressed. Collectively a molecular link between PARPi sensitivity and replication dysfunction provides a new paradigm for understanding synthetic lethal interactions in BRCA cancer.
Peferences
Maya-Mendoza, A. et al. High speed of fork progression induces DNA replication stress and genomic instability. Nature 559, 279-284, doi:10.1038/s41586-018-0261-5 (2018).
Peferences
Maya-Mendoza, A. et al. High speed of fork progression induces DNA replication stress and genomic instability. Nature 559, 279-284, doi:10.1038/s41586-018-0261-5 (2018).
●2019.12.3|Current status in Russian Perinatal Medicine and Introduction of National Medical Research Center for Obs., Gyn. & Perinatology
Ekaterina Yarotskaya 先生 MD, PhD
Associate Professor, Head, Department of International Cooperation RSOG Executive, National Medical Research Center for Obs., Gyn. & Perinatology
司会:渡辺稔彦(外科学系小児外科学)
厚生労働省 日露医療協力推進事業 小児周産期分野(ロシアにおける小児内視鏡分野の普及促進)における活動の一環として、クラコフ名称ロシア連邦産科・婦人科・新生児科研究センター、エカテリーナ・ヤロツカヤ医師が訪問されます。この事業は、日本とロシアでの新生児・乳児の周産期医療および内視鏡手術の診断・技術に関して、相互協力体制を構築し、知識・技術を普及促進することを目的としています。今回、新生児・乳児に特化したモスクワ最大の小児医療センターの紹介とロシアの周産期医療の現状についてご講演頂きます
●2019.12.6|子宮体癌および前癌病変について
前田宜延 先生
富山赤十字病院 病理診断科・部長
司会:中村直哉(基盤診療学系病理診断学)
子宮体癌はBokhman により提唱されたⅠ型癌およびⅡ型癌の2つに分類され,長らくこの分類が用いられてきた。最近では次世代型シーケンサーの発達により腫瘍の遺伝子解析が進み,POLE,MSI,Copy number lowおよびCopy number high の4群に分類され,それぞれの群にみられる遺伝子異常,形態学的特徴および生物学的特徴も明らかにされるに至った。前癌病変についても分子生物学的な検討がなされ,Ⅰ型癌に対してはEndometriod intraepithelial neoplasia (EIN),Ⅱ型癌に対しては serous endometrial intraepithelial carcinoma (SEIC) が提唱された。EIN は2017年からは第4版子宮体癌取扱い規約にも採用され,よく認知されるようになった。
子宮体癌の特徴に加え,前癌病変の実際の診断精度についてまで言及したいと考えている。
●2019.12.12|Genetic Basis of “Self” Recognition in Immunobiology
Nicholas F. Parrish 先生 M.D. Ph.D.
理化学研究所 生命医科学研究センター ゲノム免疫生物学 理研白眉研究チームリーダー
中川草(基礎医学系分子生命科学)
An organism’s germline genome defines the genetic legacy contributed to its offspring and underlies the immunological concept of “self.” Programmed rearrangement of mammalian immune cell genomes results in diverse proteins that recognize “non-self” (Hozumi and Tonegawa, PNAS 1976). This enables adaptive immunity, distinguishing “self” from “non-self” with specificity and life-long memory. In contrast, CRISPR immune systems integrate “non-self” sequences into specific genome loci from which they are expressed as small RNAs. These RNAs guide enzymes which recognize and destroy “non-self.” Weismann’s barrier, described as Biology’s Second Law (Mattick PNAS 2012), dictates that “non-self” sequences of exogenous viruses should not influence mammals’ germline genomes. However, sequences from somatically-acquired viruses, called endogenous viral elements (EVEs), have been described in numerous organism’s genomes, including humans (Horie et al., Nature 2010; Nakagawa and Takahashi, Database 2016). Intriguingly, some organisms with EVEs are immune to the virus from which the EVE was derived. Analogous to CRISPR, small RNAs called PIWI-interacting RNAs are often transcribed from EVEs and are capable of RNA-guided interference against “non-self” (Parrish et al., RNA 2015). Dr. Parrish will present evidence that mammalian EVEs may enable sequence-specific discrimination between “self” and “non-self.”
●2020.1.8|医工連携の新時代
谷下一夫 先生
一般社団法人 日本医工ものづくりコモンズ 理事長
司会:後藤信哉(内科学系循環器内科学)
日本では学部教育において医学部と工学部には大きな差異があります。医学部では臨床の訓練が強調され、工学部では物理、化学の原理から製品作成のプロセスが重視されます。近年、臨床医学において工学的技術の重要性が再認識されています。CT, MRIなどの画像診断抜きでは日々の診療はままなりません。これらの診断機器が医師にとってブラックボックスとなれば、理屈のない診療がまかり通る恐れもあります。
日本では医療機器の規制が厳しいこともあり、これまで多くの医療機器は外国製でした。日本のモノ作り技術は世界に評価されているのに、医療機器作りが苦手となる理由はなんでしょうか? 医学と工学の密接な連携により国産の医療機器開発を目指すプロセスについてお話ししたいと思います。
日本では医療機器の規制が厳しいこともあり、これまで多くの医療機器は外国製でした。日本のモノ作り技術は世界に評価されているのに、医療機器作りが苦手となる理由はなんでしょうか? 医学と工学の密接な連携により国産の医療機器開発を目指すプロセスについてお話ししたいと思います。
●2020.1.30|難治性疾患への挑戦
谷垣塚彰 先生
京都大学大学院 生命科学研究科 教授
司会:稲垣豊(基盤診療学系先端医療科学)
近年の目覚ましい医学・医療の進歩にも関わらず、神経変性疾患に代表されるように未だ治療法がない疾患(難治性疾患)が幾つも存在する。このような難治性疾患の多くでは、共通して、障害部位での細胞死が観察される。従って、これらの難治性疾患に対しては、障害される細胞を細胞死から守る方策(薬剤)を作りだすことが理想的な治療戦略となる。我々は、これまでの研究結果から、ATPレベルの減少が神経細胞死に深く関与している考え、ATPの減少を防ぐことによってこれらの疾患の発症の予防と進行の抑制ができると考えてきた。そのような考えのもと、VCPと呼ばれる細胞に豊富に存在するATP分解酵素のATP分解活性を抑制する化合物KUSs (Kyoto University Substances) を開発した。本講演では、我々が開発したKUSsが、複数の 難治性疾患のモデル動物において、広く細胞を細胞死から保護する作用を持つことを紹介するとともに、細胞死の軽減による難治性疾患の病態軽減の可能性を議論する。
●2020.2.20|シアロムチンとERM蛋白質による細胞接着制御機構
立花宏一 先生
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 主任研究員
司会:安藤潔(内科学系血液・腫瘍内科学)
我々の体は多数の細胞が接着することで形作られているが、上皮細胞apical面や白血球には非接着細胞表面がある。私はCD43, CD34等の細胞表面シアロムチンおよびリン酸化Ezrin/Radixin/Moesin (ERM)蛋白質が非接着機構であることを明らかにして来た。刺激による白血球接着誘導におけるERM脱リン酸化、付着細胞の接着とERMのリン酸化状態の変化について述べ、細胞接着や細胞極性形成機構について討論したい。
●2020.2.21|GONAD法によるゲノム編集動物やモノクローナル抗体を用いた基礎医学研究-腎臓病の病態解明に向けた分子遺伝学的解析―
松山誠 先生
重井医学研究所 分子遺伝部門 室長
司会:大塚正人(基礎医学系分子生命科学)
重井医学研究所は医療法人が所有する研究所であり、基礎医学的な研究を行っている。これまでに研究所では、1995年にラット腸骨リンパ節法、2006年にマウス腸骨リンパ節法を発表し、モノクローナル抗体を簡便に作製する方法を開発してきた。また近年では、東海大学と共同で、簡便なゲノム編集マウス作製法、i-GONAD(improved Genome-editing via Oviductal Nucleic Acids Delivery; Genome Biol., 2018)、ゲノム編集ラット作製法、rGONAD(Rat GONAD; BMC Biotechnol., 2018)を確立した。本講演では、GONAD法を用いた遺伝子改変マウス・ラットの作製法や、腸骨リンパ節法による簡便モノクローナル抗体作製法を紹介する。また、i-GONAD法にて作製したゲノム編集マウスを用いた腎不全の初期段階の病態解明に関する研究や、rGONAD法により作製した腎臓病モデルラットについても紹介したい。
●2020.2.27|内科医が知っておくべきアルコール健康障害
露木寛之 先生
久里浜医療センター 精神科 医員
司会:柳秀高(内科学系総合内科学)
露木寛之先生は東海大学をご卒業後、総合内科/総合診療での先進的病院である諏訪中央病院で初期研修を続けられました。その後、沖縄協同病院、沖縄県立中部病院、同宮古病院、など質の高い総合診療、教育で有名な病院で後期研修を修了され、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、指導医を取得されました。これらの過程においてアルコールによる健康被害に注目され、現在我が国においてアルコール健康障害に関する診療、研究の中心の一つである久里浜医療センターでさらなる研鑽を積まれています。アルコール関連健康障害は我が国において大きな問題であり、厚生労働省の調査ではアルコール依存患者は100万人いても、治療を受けているのは5万人に過ぎないという報告もがあり、その多くが見逃され、健康障害が過小評価されております。アルコール依存は専門医療機関に紹介することが望ましいとされてきましたが、専門医療機関の数が少く、また紹介の同意が得られにくいといった事情などもあり、プライマリ・ケア医、内科医などが対応する必要性があると指摘されています。
露木先生は、総合診療、総合内科、精神科でのご経験が豊富であり、プライマリ・ケア医、内科医が知っておくべきアルコール健康障害についてご教示いただくには最適な機会です。明日からの皆様の診療に役立て頂きたいと思います。
●2020.3.3|舌小帯短縮症と上唇小帯短縮症 ~Tethered Oral Tissuesという考え~
伊藤泰雄 先生
新百合ヶ丘総合病院 小児科(小児外科) 杏林大学名誉教授
司会:渡辺稔彦(外科学系小児外科学)
2001年に日本小児科学会が「舌小帯短縮症と哺乳には関連がない。切開を必要とする舌小帯短縮症は稀である」という声明を出して以来、日本では舌小帯手術は消極的になった。その後、アメリカ小児科学会から「舌小帯切開は哺乳を改善する可能性があり、経験をもつ医師に紹介すべきである」とのガイダンスが出され、日本でも「哺乳障害のある乳児のハート舌は切除する」ことが推奨された。最近、海外では舌小帯短縮症、上唇・下唇小帯短縮症、頬小帯短縮症はTethered Oral Tissues(口内小帯係留症)という概念で捉えられている。今回、舌小帯短縮症に関わる治療の歴史と長年の臨床経験に基づく適切な考え方とその治療法についてご講演頂きます。