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2017年度 新任教授記念講演会要旨
《新任教授》氏名をクリックすると要旨が表示されます。
《新任教授》教員所属表順
DNA修復とガン:ファンコニ貧血から広がる世界
谷口 俊恭(基礎医学系分子生命科学)
DNA には様々な原因で傷がつきますが、細胞はその傷を直すメカニズム(DNA修復)を持っています。私たちはDNA修復のガンにおける役割を明らかにするためにFanconi anemia (FA) (ファンコニ貧血)に注目して研究をしています。FAは高発ガン、DNA鎖間架橋剤高感受性を特徴とするまれな遺伝性疾患です。FA蛋白と乳癌卵巣癌感受性遺伝子BRCA1, BRCA2の産物蛋白は共同してFA-BRCA pathwayを形成しDNA修復を制御します。抗ガン剤耐性獲得はガン治療における重要な問題ですが、私たちは腫瘍細胞でFA-BRCA pathwayが再活性化すると抗ガン剤(シスプラチン、PARP阻害剤)耐性が獲得されることを見つけました。このように、まれな遺伝性疾患及びDNA修復の研究は、ガンの病態の解明に結びつきうる重要な研究分野なのです。 【2017.6.5】
骨格筋由来幹細胞:臨床応用を目指して
玉木 哲朗(基礎医学系生体構造機能学)
自身の研究履歴を振り返りつつ、臨床応用を目指した骨格筋由来幹細胞研究の発想・現状・発展に関して講演した。骨格筋=幹細胞の貯蔵庫という発想から、骨格筋間質に筋・末梢神経・血管系細胞、即ち骨格筋・心筋細胞、シュワン細胞、神経周膜・内膜細胞、血管内皮・周皮細胞・血管平滑筋等に分化可能な幹細胞群が存在することを発見し、そのin vivoでの着床・分化・再生能力をGFP-Tgマウス→マウス移植実験を中心に検証・証明してきた。そして、これらの能力は損傷した骨格筋・腱を始め、坐骨神経、尿道・膀胱周囲、顔面神経・血管網、気管支断端等の再生に有効であることを証明した。さらに、ヒト骨格筋由来幹細胞でも同様の組織再構築能力があることを、免疫不全動物を用いた移植実験系で証明した。今後は、臨床試験への最終ステップとして大型動物であるマイクロミニブタ及び同種GFP-Tgブタを用いた移植実験を計画している。【2017.6.19】
NotchシグナルとT細胞分化
穂積 勝人(基礎医学系生体防御学)
【2017.6.12】
医学教育に黒船
浦野 哲哉(基礎医学系医学教育学)
2010年、外国人医師が米国で医療を行う際の資格を審査するECFMGは「2023年以降は、国際認証を受けていない医学部の出身者には申請資格を与えない」と発表した。国際認証は世界医学教育連盟が公表する医学教育のグローバルスタンダードに沿って行われ、評価項目は9領域36項目に及ぶ。本学では、2021年の国際認証受審に向け準備が始まっている。認証に合格するためには、教育のアウトカムを客観的に分析し、カリキュラムの開発と評価に繋げるためのシステム作りが必要とされる。本学では、Andragogy(成人教育学)の理論に基づき開発した「屋根瓦方式BLS教育」を2008年度より実施している。本講演では「屋根瓦方式BLS教育」のアウトカムを従来のBLS教育のそれと比較し、良好な成果が得られたことを報告し、理論に基づいたカリキュラムの開発と客観的なカリキュラム評価の重要性について概説した。【2017.6.19】
地域連携における総合内科の役割
島田 恵(内科学系総合内科学)
2私は循環器内科医、救急医としてこれまで長く活動を行ってきましたが、これまでの知識や経験を生かせる場として本年1月より大磯病院総合内科に赴任しました。長年地域の医療を支えてきた大磯病院における総合内科の役割を考えた場合、高齢者医療、そして地域連携を中心に活動していく事が最も重要だと思われます。そのためには、プライマリケアとしての内科診療、院内外からの紹介患者の対応、救急診療、高齢者の疾患予防外来、といった事を積極的に行い、医師会や高齢者施設、付属病院との連携を患者支援センターでの活動などとも合わせて推進していきたいと考えております。総合内科の診療(勤労)の向上(飛躍)が、病院内外の部門や施設との強い連携(友愛)の元に病院及び地域の発展に寄与できるように日々精進していく所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い致します。【2017.6.26】
地域連携における総合内科の役割
加川 建弘(内科学系消化器内科学)
肝内胆汁うっ滞症はまれな疾患であるが、一旦発症すると、黄疸が持続し、胆汁性肝硬変から肝不全にいたる可能性がある難治性疾患である。本疾患の原因は不明であるが、胆汁成分を毛細胆管に排出するトランスポーターに異常が生じている可能性がある。私は胆汁分泌のdriving forceである胆汁酸トランスポーター(BSEP)が本疾患の発症に関与していると考え、BSEPの生化学的特徴、胆汁うっ滞発症時の変化、病態に及ぼす影響につき研究を重ねてきた。その結果、BSEPの機能発現には糖鎖修飾が必須であること、BSEPの遺伝子異常により、種々の先天性胆汁うっ滞症が発症すること、後天性胆汁うっ滞症でBSEP蛋白の安定的発現が阻害されていること、UDCAの利胆作用がBSEPの毛細胆管側における発現増強に起因すること、などを明らかにした。【2017.6.5】
やりぬく心
鈴木 孝良(内科学系消化器内科学)
1989年10期生として東海大学医学部を卒業。1992年三輪内科(内科6)入局後の研究歴をお世話になった先生方へ感謝を込めて解説するとともに、今後の研究活動方針と人材育成について講演した。壁細胞班に配属され、モルモット単離壁細胞を用いた酸分泌機構の研究が始まりで、留学先のミシガン大学John Del Valleラボでは、イヌ単離胃細胞を用いた細胞内シグナル伝達機構の研究に従事した。帰国後は、臨床的課題に基礎的手法を融合させることで、消化器内視鏡診療を基軸に据えた研究をcollaborationしながら実践してきた。これからも先進的臨床研究を継続することで良質の医療を患者に提供したい。今後は、大学病院として診療の充実を図るとともに、消化器病学の発展に寄与できる研究と消化器内視鏡医の育成に力を注いでいきたい。次世代を担う人づくりには、やりぬく力(情熱+根気強さ)をもった人材をいかに育てるかが重要である【2017.6.26】
腎不全治療としての腎移植 〜これまで と これから〜
中村 道郎(外科学系移植外科学)
私は医学部卒業後、東京女子医大病院腎臓病総合医療センターの太田和夫教授に師事し、ここが現在の私の礎となっています。腎移植医療を専門とする以上、慢性腎不全・透析医療に常に深く関わり、そして貢献すべきことをここで学びました。現在でもそれを引き継ぎ、腎移植医療を中心に、血液透析・腹膜透析をうけている腎不全患者さんに対する特有な外科的治療、すなわち透析アクセス(シャント)手術、副甲状腺機能亢進症の手術などを行っています。東海大学医学部付属病院での腎移植は1976年に始まり、2012年度から「移植外科」が新設され、現在腎内分泌代謝内科/泌尿器科および多くの部署と連携して定期的に行っております。これからの腎移植は、長期予後を目標とした質(quality)を求められます。臨床面では、しっかりとした腎移植医療チームを整え、研究面では斬新的なアプローチで臨床研究を進めて、患者満足度の高い腎移植・腎不全医療を行って参ります。今後ともご指導そしてご支援のほどよろしくお願いいたします。【2017.6.5】
下部尿路機能の障害:過活動膀胱における求心性伝達機構の変化について
座光寺 秀典(外科学系泌尿器科学)
下部尿路とは膀胱と尿道を称し、これらは協調して蓄尿及び排尿を担う。蓄尿機能障害の代表的疾患が尿意切迫感を主症状とする過活動膀胱(Overactive Bladder: OAB)であり、本邦において40歳以上の12.4%、約800万人がOABを有しているといわれている。その成因は尿意の求心性伝達機構の異常と想定されているが、そのメカニズムをはじめ不明な点が多い。我々はこの原因を究明すべく、伝達機構の始まりである膀胱上皮に注目して研究を行ってきた。膀胱上皮には各種イオンチャンネルや受容体が存在し、上皮から放出されるATPやPGなどの各種メディエーターが尿意の伝達に重要な役割を担う。これら受容体やメディエーターの変化により求心性入力が増加すると考えられている。ラットOABモデルを用いてPGEレセプターとBig K (BK)チャンネルの膀胱上皮での発現をRT-PCRと免疫染色で検討した。PGE4レセプターがOABで多く見られ、これは等尺性収縮実験より膀胱を弛緩させる作用が確認できた。さらに膀胱内圧測定検査で排尿回数を減少させることから、OABによる過剰収縮を抑制する機能が示唆された。BKチャンネルはOABモデルで減少し、拮抗剤の膀胱内投与で泌尿回数を増加させたため、BKチャンネル減少がOAB発症機序に関与している可能性が示唆された。近年では伸展刺激や侵害刺激によりATPなどメディエーターを放出するメカノセンサーがこの求心性伝達機構に大きく関与している可能性が高いと注目されている。その代表的なTransient Receptor Potential: TRP ファミリーの一つTRPA1の発現と機能についても同様の手法で調べてみた。TRPA1は膀胱上皮に多く存在し、antagonistで排尿回数を増加させるため、TRPA1活動亢進がOABに関与している可能性が示唆された。その他大型のメカノセンサーをして注目されているPiezo1は膀胱上皮と平滑筋に存在し、細胞を伸展させるとノックダウンマウスでは細胞内へのCa2+流入が減弱した。Piezo1の阻害により排尿回数減少と排尿量増加を認め、やはりOABへの関与が示唆された。このように求心性伝達機構には様々なメカニズムが考えられており、OAB発症についてはまだまだ多くの解明すべき課題がある。これらを明らかにするとOAB治療へと繋がると思われる。【2017.6.26】
東海大学医学部泌尿器科学教室の沿革 ---私の臨床・研究を重ね合わせて---
長田 恵弘(外科学系泌尿器科学)
教授講演会で本医学部泌尿器科学教室の沿革と臨床研究生活を重ね合わせ研修医・大学院・関連病院出向中とUCLA留学・本学八王子病院在職中に分けお話をさせて頂きました。本学医学部付属病院が開院後大越正秋,河村信夫両教授が医局を主宰し研究主体は尿路感染症で菌株の保存や感受性データの解析と膀胱腫瘍を学位テーマとしラット膀胱発癌過程と培養細胞株の樹立により学位を取得しました。関連病院で手術技術の向上と研究結果を投稿していた頃UCLA留学の機会を得,感染臓器微小循環動態の研究,帰国後本学八王子病院開院準備段階から参画する幸運に恵まれました。この頃寺地敏郎そして宮嶋哲両教授が教室を主宰され体腔鏡手術ではトップクラスになりました。2003年3月本学八王子病院開院後東京薬科大学病原微生物教室の間で尿路感染症の迅速診断の共同研究が始動し我々のシステムでは1時間で細菌数定量が完遂可能であることを報告しました。【2017.6.5】
泌尿器腹腔鏡手術の現状とこれから
宮嶋 哲(外科学系泌尿器科学)
これまで腹腔鏡手術を中心に低侵襲治療に従事し、その普及と発展に力を注いできました。この20年間で泌尿器科領域の外科治療はテクノロジーの進歩とともに大きく変貌してきました。内視鏡光学視管の改良、3D内視鏡、手術支援ロボット、血管シーリングデバイスの登場等多くの医療工学の改善と進歩によって治療方針も大きく変化してきました。14年間勤務してきた慶應義塾大学医学部では腹腔鏡手術トレーニングシステムを確立し、この10年間で20名の腹腔鏡技術認定医を輩出しました。また単孔式腹腔鏡手術やロボット支援手術の導入に際して常に指導的な役割を果たして参りました。東海大学医学部におきまして低侵襲治療をさらに発展させるべく、医療工学の進化に敏感で最新の高度医療を積極的に取り入れ、地域医療に貢献する土台に立った上でエビデンスを世界に発信し、ひいては世界的診療拠点の一角を担えるよう努力を続けていきたいと考えています。【2017.6.12】
緑内障研究の未来
山崎 芳夫(専門診療学系眼科学)
【2017.6.19】
漢方の魔術師に憧れて
新井 信(専門診療学系漢方医学)
小学校6年の時、10年後の私という文集に「漢方の魔術師になっているだろう。」と書いた記憶がある。子供心に漢方を極めたいと思っていたのだろう。私は昭和33年に埼玉県秩父市に薬局の次男として生まれた。父が独学で漢方を勉強していたため、一旦は薬学部を卒業したが、新潟大学医学部を再受験して医師になった。東京女子医大消化器内科で研修後、平成4年に同東洋医学研究所に移籍し、本格的に漢方の道に入った。東海大学へは平成17年に赴任し、平成27年に医学部専門分野として全国有数の専門診療学系漢方医学が誕生、平成29年に私がその初代教授を拝命した。日本漢方には現在、生薬資源の確保、国際化問題、エビデンスの構築など、課題が山積している。大学において漢方の診療や研究はもちろん重要だが、私が任期中に取り組みたい課題は、漢方医学教育の確立、医療経済における漢方の優位性の証明である。これらの課題に全力で取り組んでいく所存である。【2017.6.12】